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鉄拳の原田Pが日本ゲーム産業の衰退と復興を語る! 「FF15は明らかにビジョンから逆算された設計が見える」

鉄拳7ロゴ

いやああああ、長い!!すっごい大長編のインタビュー記事が爆誕しました。バンダイナムコの原田Pが格闘ゲームの暗黒の10年の裏側、ひいては日本のゲーム産業の衰退と、復活への道筋を語っためっちゃ長い記事をご紹介します。長いんですが、話が面白すぎなんですよ! 日本ゲームの衰退なんて話はよく聞くもので、実際にずーっとゲームを見ている僕らでも実体験としてあるわけですが、原田さんの話は実際の生データとか、その時にナムコではどんな判断がされていたのか?といった話が織り交ぜられておりまして、エグいです。

「欧米でアーケード文化がなくなり、インフラが未成熟で家庭用ゲーム機にはオンライン対戦がなかった」時期。この時期をどう過ごしたかが、格闘ゲームフランチャイズの運命の分かれ目でした。

 『鉄拳5』って、アメリカで基板がどれだけ出たか知っていますか? 当時の日本ではこの高価な基板と筐体が数千台という単位で売れていましたが、アメリカでは……北米向けの筐体の台数で言うと100台程度ですよ。

ゲームセンターがアメリカで完全に衰退し、オンラインゲームが出るまでインフラが整っていなかった2000年あたりが暗黒の10年。さらに、よく指摘されるようなミドルウェアの開発の遅れから、一気に欧米の近代的なゲーム開発に後れを取ることになっていきます。

僕らは、ちょうどプレイステーション2(2000年発売)に移行する以前の段階からすでに、「21世紀に入ると、開発側も市場も、このままだと欧米がいちばんの勢力になる。ヤバいぞ」、「アメリカの逆襲がそこから始まる」ということに気づいていました。(中略)「一度作ったものをどう効率よくほかに転用できるか」ということを合理的に考える人たちだったので、いわゆるゲームエンジンやミドルウェアにかなり早くから力を入れ始めていた

世界トップクラスと言われたナムコのリードプログラマたちは完全にそれを察知していて、警鐘を鳴らし続けていました。(中略)僕も含め、全員若手社員でしたし、経営まで力が及びませんでした。

欧米には当時から、CTO(チーフテクニカルオフィサー)という職業が存在していました。これは“最先端のテクノロジーを理解したうえで経営判断をする人間”というものです。(中略)まあ、現在でも日本の業界にはCTO的なポストが確立されているようには見えませんが。

ゲーム業界に限らず、日本の経営者は最先端の技術に疎いですよね。

鉄拳は格闘ゲームとしてアーケード中心の売り方から家庭用ゲームへと主軸を変え、日本市場ではとても足らないので、売り上げのほとんどを海外で稼ぐモデルに大きく変更することで厳しい時代を生き延びてきました。そして、eスポーツやネット生中継によって、ゲームは「プレイする」だけでなく「観戦する」ものへと大きく変化してきています。

さらにゲームの売れ方も大きく変わってきています。これまでは発売日にバッと売れて資金回収して終わりだったものが、継続的に売れるようになってきているのです。

日本は中流階級が多いので、みんなは定価のあいだで新作をバッと買っちゃう。欧米でも、当然最初から定価で買うのが気にならない人が最初に買います。でもそうでない人々は、値下がりやセールの時期にようやく「欲しかったあれが買える」んです。(中略)『鉄拳3』なんて、リリースした1年目で、国内130万本、ワールドワイドで430万本だったのが、2002年まで5年かけてなんと830万本まで伸びました。

こうなると、発売日の後でも継続的に売る、「運営」型の売り方に変わってきます。そうしたタイトルは『Destiny』や『オーバーウォッチ』など、絶対に売れることが信じられているようなマーケティングが当初から打たれる開発+マーケティングが一体となった開発手法になっていると同氏は指摘します。

ゲームの生みかたの難しさは、ずっと変わりません。ただ、売りかたの難度は圧倒的に上がっているわけです。「すごいものができました。どう売りましょうか」じゃもう駄目なんです。
 作るとき、作っている段階からどう売れるかを考え、いわゆる開発系の人間と、マーケティング系の人間が「このゲームがヒットしているビジョン」をちゃんと描いて、そのために必要な要素やゲームの仕様やニーズに対する答えを開発時から盛り込んでいく必要がある。

そして、それができている例としてFF15を挙げておられます。

 あれは明らかに、ビジョンがあって逆算して考えられて設計された側面がゲームにも垣間見える。「こうじゃないと勝てない」というビジョンから組まれた基礎設計がね。(中略)そんなふうに、「ゲーム開発側とマーケティング側がビジョンをひとつにして設計していく」という体制を作りながら、ゲーム設計時に始まり、発売、発売後の展開を5年間ともにしている、というプロジェクトチームの回しかたが必要なんです。
 まさに最先端の技術と、最先端のマーケティングと投資が三位一体になって出来上がっている、というやつです。

インタビューではこのほかにも、大部分の人が格闘ゲームに対して誤解している話とか、小さいコミュニティが世界的なeスポーツにつながるようになった歴史から、格闘ゲームに関するありとあらゆることが語られています!ゴールデンウィークにゆっくり読んでみると面白いかと思います。

それと、先日行われた原田PとFF15田畑Dの対談がめっちゃ面白かったので、合わせてオススメです。

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