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実は、ソフトバンクより先にKDDIがイーアクセス買収を画策していた! 買収劇の裏側を読み解く


時価総額の3倍という高値でイーアクセスを買収したソフトバンク。 しかし、日経新聞によると、KDDIのほうがソフトバンクより先にイーアクセス買収を持ちかけていたそうです。

実はKDDIも周波数帯拡大を狙い、ソフトバンクより早い時期からイー・アクセスや、同社の筆頭株主で約3割の株式を保有する米ゴールドマン・サックスに接近していた。しかし買収金額を巡って折り合いがつかない状態が続いていたもよう。慌てたソフトバンクはその間隙を縫い「この1~2週間で巻き返した」(関係者)という。

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一方で、テザリングを先に実施したKDDIのiPhone 5発売後の販売数はどうかというと、これが絶好調だそうです。ITmediaの記事によると次のとおり。 

9.5万回線という9月の純増数は、2007年3月の14万8000回線に次ぐ多さとなり、12カ月連続で純増トップとなる見込み。9月はauとソフトバンクモバイルがLTEの導入とiPhone 5の発売を同時にスタートさせており、その販売動向に注目が集まっているが、KDDIによると、ソフトバンクモバイルからの番号ポータビリティによる純増は前月比3倍に達しているという。

テザリングのおかげでそんなに好調なら対抗してソフトバンクも始めればいいじゃん!って思っちゃいますよね?でも始められないんです。ソフトバンクの技術を束ねるトップ、宮川CTOが9月18日のITmediaのインタビューにこんなことを言っています。

現在、ソフトバンクモバイルの2.1GHz帯のネットワークは、40MHz(上りと下りで20MHzずつ)の帯域幅で展開しています。10MHz幅で4つの電波を発射しているわけです。この周波数の中でLTEを展開するために、新しく割り当てを受けた900MHz帯のうち、現在使える10MHz幅の電波を1波追加して、5波の電波を用意し、2.1GHz帯の電波のうち1波分(10MHz)を止めて、LTEに切り替えるという作業を行っています。

山手線の品川から新宿くらいまでのエリアは、トラフィックが非常に多く、フル活用されている2.1GHz帯の4波に900MHz帯の1波を追加しても、2.1GHz帯の1波を止められるだけの余裕ができないところがあるのです。そういう場所が、山手線の南側で100局くらいあって、この辺でLTEへの移行に苦労しています。

LTEを始めるために、2.1GHzの3Gを1つ止める。止めた分は今構築中のプラチナバンドの900MHzでまかなうって言ってます。LTE開始は玉突きの引越しなんです。 玉突きするには「ひとつの空き」が必要だけど、都会ではそれすら捻出できないほどカツカツになっちゃってる、と。

状況をまとめるとだいたい次のとおりです。
 ・両者の料金プランに差が無い。だから電波品質の勝負になる。
 ・auはiPhone 5専用のLTE用に新しく2.1GHz帯を用意。3Gに影響なく基地局増設が可能。だから、テザリングを実施できるほど設備に余裕がある
 ・auとイーモバは通信方式が違うので買収してもすぐに活用できない
 ・ソフトバンクがLTEをはじめるためには、3Gの電波を減らさないといけない。だから、3Gが混雑している都会ではLTEを始められない。都会では電波が足りなくてカツカツ!こんな状況でテザリング解禁したら崩壊する!

 ソフトバンクがテザリングを発表しなかったところ、先にテザリングサービスを始めてしまったauに人がすごい勢いで流れ出してしまった。しかも自分ではすぐにテザリングを始めることができない。

 どうですか? めちゃくちゃ追い詰められていたわけです。 そこで目をつけたのがイーアクセス。イーアクセスの持つ1.7GHz帯のLTE設備はそのままソフトバンクのiPhone 5で使えるんです。イーアクセスは田舎より都会が充実。 今ソフトバンクが欲しいのは都会の電波。こんな美味しい話はありません! 

 だから一気に時価総額の3倍という高値でイーアクセスを買収したわけです。 でも、イーアクセスもソフトバンクのそんな苦しい状況はわかっていたはず。今回一番得をしたのは誰かというと、イーアクセスの千本会長とゴールドマンサックス証券ではないでしょうか。 約1850億円もの借金をかかえるイーアクセスという会社を恐ろしいくらいに好条件で買収してもらったんですから。 きっと足元見てふっかけたに違いありませんw。 でもここでサッと大金を出す決断ができる孫さんはやはり経営者として素晴らしいと思います。

ちなみに、千本会長はNTTを辞めてDDI(現在のKDDI)を創業した方。なんというめぐり合わせなんでしょうか…。

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