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ガンダムUCに登場するタピスリー「貴婦人と一角獣」の本物を見てきた! 会場の音声ガイドはシャア&オードリー

130年間でフランス国外に出たことは一度しかないという、フランスが誇る至宝「貴婦人と一角獣」がまさかの来日をしています。フランスのクリュニー美術館の改装が終わるまでの間、六本木の国立新美術館で展示されていますので、これは滅多に無い機会だと鑑賞してきました。 この作品は4メートル四方の6枚からなる大作で、最近では「機動戦士ガンダム ユニコーン」にも物語のカギとなるタペストリーとして登場しています。 今回は、六本木ヒルズの「ミュシャ展」、ARTNIAの「ベイグラントストーリー原画展」にもあわせて行きましたが、それらは別の記事にて。


国立新美術館は六本木ヒルズや東京ミッドタウンの徒歩圏内。 六本木ヒルズの森美術館、東京ミッドタウンのサントリー美術館とともに「六本木アートトライアングル」を形成していて、どれかの美術館の半券を出すとほかの美術館でチケットが割引になるような連携企画があります。森美術館は初音ミクも参加の「LOVE展」をやってますからあわせて行くと一日楽しめるかもしれませんね。


2007年にできたばかりの新しい美術館ということもあり、黒川紀章さんの設計したモダンな建築です。カフェテラスにはポール・ボキューズなどの飲食店があり、「貴婦人と一角獣」の特別メニューを提供していました。

展示室は2階。

それでは、展示室に入ります!


入ってすぐのところで500円でレンタルできる「有料音声ガイド」。声を担当しているのはシャア役やフル・フロンタル役で知られる声優の池田秀一さん。そして、オードリー・ヘップバーンの吹き替えで知られる池田昌子さん。このキャスティングはガンダム好きな人たちを狙っているとしか思えません!ちなみに、ガンダムユニコーンに登場する「オードリー」の元ネタが、女優のオードリー・ヘップバーンです。

迷わず500円を課金。

「歩きながらお聞きください」という池田昌子さんの声に導かれ、暗い展示室へと足を進めていきます。

すると現れるのは、広大な空間。

ガンダムUCの劇中ではこんなかんじのサイズ感でしたが、本物はもっと大きい!六本木経済新聞さんに館内の写真が掲載されていますので引用します


「貴婦人と一角獣」を一望できる主展示室
六本木経済新聞

1枚が4メートル四方あって、それが6枚ぐるりと並んでいます。圧倒的じゃないか!いきなり広いところに出て戸惑っていると、耳元でシャアがアドバイスしてくれます。
「まずは真ん中に立って、ぐるりと見回してみよう」
音声ガイドは作品の解説をしてくれることはもちろんですが、どこをどう見たらいいのか「促す」ような言葉もあって、スムーズに鑑賞できます。また、解説の文字を読む必要がなくなって絵を見ることに集中できます。オススメ。


ガンダムUCの劇中の背景画を切り張りしてつなげてみました。真ん中に「我が唯一の望み」を配置し、それを取り囲むように残りの五感が配置されています。対して、国立新美術館では左から一直線に「触覚」「味覚」「嗅覚」「聴覚」「視覚」「我が唯一の望み」の順に並べられています。

それぞれのタイトルは作者がつけたものではなく、後世になってつけられたもの。「我が唯一の望み」は、描かれているテントの上部にフランス語で「A Mon Seul Désir(=我が唯一の望み)」という文字があるためそう呼ばれています。残る五感は「音楽を演奏する」「花の香りをかぐ」「鏡を見る」「角を触る」「キャンディを食べる」といった仕草が確認できることからきています。

五感とは関係のないタピスリーとなっている「我が唯一の望み」は謎が多く、この中の貴婦人がアクセサリーを箱から取り出してつけている場面なのか、それとも体から取り外して箱にしまっている場面なのかですら、解釈が分かれているそうです。このタピスリーは「第六感」を表すものだとする意見が大勢であり、なんとなく「ニュータイプ」を連想してしまいます。


タピスリーの美しさや迫力は素晴らしく、美術について深い造詣のない筆者のようなものが見てもその凄さはよくわかります。艶のある糸と艶のない糸の違いによって光の加減で模様が浮き出る仕掛けや、模様の立体感は写真ではわからないところ。これだけでも行く価値は十分にあります。

サブ展示室には、クリュニー美術館からほかの展示物が30点ほど展示されています。これらはすべて「貴婦人と一角獣」をより深く理解するための展示です。この時代の女性たちは、こんな服を着ていただとか、アクセサリーの実物はこうだとか、タピスリーはこのように折るとか、時代背景がわかるようなものになっています。注文主として有力なのが「ル・ヴィスト家」だと説明書きがあって思わずニヤリ。ガンダムUCに登場するビスト家はこれが語源かもしれません。

サブ展示で特に興味深かったのは「高精細デジタルシアター」。何台ものプロジェクターを使って、おそらく4Kよりも高精細な映像で「貴婦人と一角獣」を分析するシアターです。6枚のタピスリーから「貴婦人の顔だけ」「獅子の足だけ」「動物たちだけ」といったようにアップで並べてみることで、6枚の比較ができるようになっていました。これはわかりやすい!デジタルもこういった使い方をするといいものですね!


というわけで、大満足の展示でした。ひとつの美術作品をここまで深く掘り下げている展示はなかなかお目にかかったことがありません。音声ガイドに使われているBGMも「デュファイ:シャンソン集」とか、ちゃんと15世紀の音楽になっていたり、細部にわたってこだわりが感じられました。作品が何を表すのかが不明、作られた正確な年代も不明、注文主もはっきりとわからない。謎だらけの作品ですが、謎は謎のまま展示して、作品にまつわる周囲の状況を詳細に説明することで、個々人が自分で解釈できる材料を与えてくれるような、そんな思いを感じました。これをきっかけに中世美術にハマってしまう人が増えるんじゃないでしょうか!

私たちが生きている間はもう日本に来ることはないでしょうから、見ておかないと損ですよ!東京での展示は7月15日(月・祝)まで、大阪での展示は7月27日(土)から10月20日(日)です。
関連:「貴婦人と一角獣」展公式サイト

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